
2022年4月に発生した知床観光船「KAZU I」沈没事故。運航会社社長であった桂田精一氏の「現在」に注目が集まっています。
刑事・民事の両方で法廷に立つ桂田氏の最新の状況と主張、そして被害者家族の思いを追います。
この記事を読むと以下のことがわかります。
- 桂田精一氏が問われている刑事・民事裁判の最新状況
- 法廷での桂田氏の具体的な主張(無罪主張)と争点
- 被害者家族の法廷での悲痛な訴えと桂田氏への思い
- 裁判以外の「現在」の私生活や地元での様子
桂田精一の現在:刑事・民事の法廷に立つ被告人として

2025年11月現在、桂田精一氏(62)は、知床観光船沈没事故を巡る業務上過失致死の罪に問われ、刑事裁判の被告人となっています。
事故発生から3年半が経過した2025年11月12日、釧路地裁で初公判が開かれました。
桂田被告は黒のスーツ姿にマスクをして法廷に現れ、報道陣に深々と一礼して裁判所に入りました。
法廷での罪状認否において、桂田被告はまず被害者家族らに対し
「心からご冥福をお祈りいたします」
と謝罪の言葉を述べました。
しかし、起訴内容の核心部分については
「船長と協議し、船長に荒れる前に引き返すと言われ、それなら大丈夫だろうと思い出航しました」
と当時の状況を説明。
そして、
「今回の罪が成立するのか私にはわかりません。そこは法律家の方に委ねるしかない」
と述べ、罪の成立について明確な見解を示しませんでした。
一方で、弁護側は「事故は予見できなかった」として、全面的に無罪を主張しています。
桂田被告の「現在」は、自らの経営者・運航管理者としての責任が法的に成立するかどうかを、法廷で争っている状況です。
民事裁判でも争う姿勢
刑事裁判だけでなく、桂田被告は民事裁判の被告でもあります。
2025年3月からは、乗客家族ら29人が、桂田社長と会社に対し合計約15億円の損害賠償を求める民事訴訟(札幌地裁)が始まっています。
この民事裁判の第1回口頭弁論にも桂田氏は出廷しましたが、自ら発言することはなく、代理人弁護士を通じて「被告自身に過失はない」と主張。
遺族側の請求を棄却するよう求め、刑事・民事の両面で法的な責任を争う姿勢を鮮明にしています。
裁判の争点:なぜ桂田精一氏は責任を問われているのか

桂田被告が法廷で厳しく責任を追及されている背景には、事故当時のずさんな安全管理体制と、運航管理者としての判断への重大な疑義があります。
沈没の直接原因と運輸安全委員会
2022年4月23日、乗客乗員26人を乗せた「KAZU I」は沈没し、20人の死亡が確認され、今なお6人が行方不明のままです。
国の運輸安全委員会の調査報告書では、船の前方にあったハッチの蓋が適切に閉まっておらず、悪天候の中でそこから海水が流入したことが沈没の直接的な原因と結論付けられています。
「陸の上」の社長に問われる予見可能性
今回の裁判で最大の争点となっているのは、船に乗っていなかった桂田被告に、事故の「予見可能性」があったかどうかです。
桂田被告は当時、運航会社「知床遊覧船」の社長であると同時に、法律に基づき船の安全を管理する「運航管理者」および「安全統括管理者」を兼任していました。
検察側は、この複数の安全責任者としての立場から、桂田被告には事故を防ぐ義務があったと強く主張しています。
検察側が起訴状で指摘する桂田被告の過失は、主に以下の点です。
- 天候悪化の認識
事故当日は、現場海域に強風・波浪注意報が発表されていました。 - 自社基準の違反
予想される風速や波高は、自社で定めた運航基準(風速8m以上、波高1m以上で出航中止)を明らかに上回っていました。 - 中止義務の怠慢
桂田被告は、この状況で航行すれば死傷事故が発生する危険を「予見」できたにもかかわらず、船長に出航や航行の中止を指示する義務を怠った、とされています。
これに対し、桂田被告側は「予見可能性」を真っ向から否定しています。
被告側の主張は、「当日は海が荒れたら引き返す『条件付き運航』だった」というものです。
船長から「荒れる前に引き返す」と聞き、それを信用して出航を認めた、としています。
この主張は、適切に引き返していれば事故は「回避可能だった」とし、直接的な運航判断の責任は亡くなった船長にあった、という姿勢を示唆しています。
常態化していたずさんな安全管理体制
原告(被害者家族)側や検察側は、事故が当日の判断ミスだけでなく、常態化していた安全軽視の経営体質が招いた「起こるべくして起きた事件」だったと主張しています。
- ハッチの不具合放置
民事訴訟で原告側は、沈没原因となったハッチについて「事故2日前に船長が不具合を認識していた」と指摘。
運航管理者である桂田社長は、この状態で出航させるべきではなかった「絶対的な注意義務違反」があったと主張しています。(被告側は「ハッチに不具合はなかった」と反論しています) - 運航管理者の不在
安全管理規程では、航行中は運航管理者が事務所に常駐し、船と連絡を取り合う義務がありました。
しかし事故発生時、桂田被告は事務所に不在でした。 - 機能しない代理体制
さらに致命的だったのは、運航管理補助者(代理)に指定されていたのが、他ならぬ「KAZU I」を操縦していた豊田船長本人だったことです。
これは、陸上で安全を監視する人間が誰もいない状態だったことを意味します。 - 「条件付き運航」の常態化
被告側が主張する「条件付き運航」自体、国が認めていない危険な運航方法でした。
桂田被告は事故後の取材に対し、「いつもやっているように」と、危険な運航が常態化していたことを認める発言もしていました。
桂田精一の現在を映す「法廷での言動」と「私生活」

引用:デイリー新潮
桂田被告の不誠実な対応は、法廷での言動や、保釈後に送る私生活の様子からも垣間見え、その姿が被害者家族の感情を逆なでしています。
被害者家族の悲痛な訴え
2025年3月の民事裁判では、被害者家族が意見陳述に立ち、法廷は悲痛な叫びに包まれました。
当時7歳の息子が行方不明のままの父親(帯広市・52歳)は、
「船体が傾いて沈んでいく中で、言葉では言い表せないほどの恐怖を感じていたと思います。
桂田社長は、乗客が感じたであろう恐怖や無念の気持ちをどう思っているのでしょうか?」
と問いかけました。
この父親は、裁判に参加する「遺族」となるため、戸籍上、息子を亡くなったものとする「認定死亡」を届け出るという、筆舌に尽くしがたい決断を迫られています。
また、千葉県から旅行に訪れ犠牲となった橳島優さん(当時34歳)の母親は、桂田社長に直接呼びかけました。
「桂田さん。息子は、船の安全を正すために生まれたのではありません。桂田さん。あなたが人命を第一に当たり前の仕事をしてくれていたらと、無念の想いは一生消えることはありません」
長年、航空会社で「運航管理者」を務めた優さんの父親も、
「安全意識のかけらもない状態にあった被告や会社が人命を預かる商売をしていたかと思うと、怒りが込み上げてきます」
と、同業者としての視点からも桂田被告の姿勢を強く非難しました。
法廷で見せた桂田被告の姿
家族らが涙ながらに訴える中、民事裁判での桂田被告の様子は「時折椅子にもたれ、目を閉じて聞いている様子だった」と報じられました。
一部の家族からは「裁判が自分のことではないように聞いていた」と、その態度に憤りの声が上がりました。
刑事裁判の初公判(2025年11月)では、謝罪は口にしたものの、自らの罪については「分からない」と曖昧な言葉に終始。
事故直後の土下座会見以降、被害者家族と正面から向き合った直接的な謝罪はなされておらず、法廷での姿勢も「責任逃れ」と受け取られています。
地元・ウトロで伝えられる「現在の様子」
桂田被告は2024年9月に逮捕されましたが、翌10月には保釈されています。
「現在」も地元・斜里町で生活を続けていますが、その言動は地域社会や被害者家族との間に深刻な溝を生んでいます。
報道によれば、桂田被告は地元の名家の出身で、観光グループを築いた有力者であるため、住民が公然と批判しにくい側面があるといいます。
そうした中、事故の影響で地元の祭りが中止になったことに対し、桂田被告が
「なんで今年も中止なんだろう。オレのせいかな」
と笑いながら話していた(ヘラヘラ話していた)という地元住民の証言も報じられました。
また、金融機関で高齢女性から
「あんた、こんなとこでのんきになにしてんのさ!」
と怒鳴られる場面も目撃されており、事故の重大さを理解していないかのような「現在」の無神経な言動が、地元住民や被害者家族の感情を逆なでしています。
被害者家族の憤り「自分が助かりたい一心」
刑事裁判で弁護側が「無罪」を主張したことに対し、被害者家族の怒りは頂点に達しています。
7歳の息子が行方不明の父親は、初公判を前に
「普通、無罪主張なんてできない。自分が助かりたい一心でめちゃくちゃですよね、言っていることは」
「事故のことだけでも毎日つらいのに、桂田被告のまるで反省していない態度や言動などでより一層、私たちは苦しめられている。とても憤りを感じる。許せないです」
と、メディアを通じて強く訴えました。
そして、
「改心して自分の過ちを認めて、心の底から反省してきちんと謝罪してほしい」
と、法廷での真摯な対応を求めました。
裁判の今後の見通しと桂田精一氏

桂田被告は現在、法廷闘争のまっただ中にあります。
刑事裁判のスケジュール
2025年11月12日に始まった刑事裁判は、今後、同社の元従業員や、同業の観光船運航業者ら19人が証人として出廷することが決まっています。
審理は計11回が予定されており、証人尋問は2025年12月から2026年2月にかけて集中的に行われます。
その後、被告人質問などを経て、判決は2026年6月17日に言い渡される見通しです。
最大の争点である「予見可能性」について、検察側がどこまで「陸の上」にいた桂田被告の責任を立証できるかが焦点となります。
民事裁判の行方
民事裁判も並行して続いています。
刑事裁判の事実認定が民事の賠償責任に影響を与える可能性はありますが、桂田被告側は一貫して過失を否定しており、こちらも長期化が予想されます。
桂田被告は初公判で
「私が話すべきことを誠実に説明してまいります」
と述べました。
これは、自らの無罪や過失のないことを法廷で「説明」し、戦い続けるという意思表示でもあります。
桂田被告は、26人の命が失われた大惨事の最高責任者として、司法の場でその責任を厳しく問われる渦中にあります。
まとめ:桂田精一の現在は?今何している?知床沈没事故の裁判と無罪主張の行方

桂田被告の「現在」について、最新の裁判状況を中心にまとめました。
- 桂田被告の現在は、業務上過失致死罪に問われる刑事裁判の被告人となっています。
- 2025年11月の初公判で、弁護側は「事故は予見できなかった」として無罪を主張しました。
- 桂田被告本人は「罪が成立するか分からない」と述べ、法廷での説明を強調しています。
- 民事裁判も並行しており、遺族から約15億円の損害賠償を求められていますが、ここでも過失を否定しています。
- 地元では保釈後も生活しているが、反省が見られないとする言動が報じられ、遺族の憤りを買っている状況です。

今後の裁判の行方を見守りたいと思います。














