2017年に元政策秘書への暴行・暴言問題で議員辞職に追い込まれた豊田真由子氏。
約8年の時を経て、彼女は再び日本の政治の中心地である永田町に戻ってきました。
しかし、その復帰は平穏なものではなく、過去の事件の解釈を巡って新たな論争を巻き起こしています。
参政党の政調会長補佐に就任

2025年9月8日、参政党は党の政策立案を担う要職である政調会長補佐として、豊田氏を党職員として起用したことを発表しました。
党の執行部にあたる「ボードメンバー」の一員にもなり、政策担当スタッフとして党運営に深く関わることになります。
これは単なる象徴的な役職ではなく、党の政策の方向性を決める上で重要な役割を担うポジションです。
既存政党とは一線を画す姿勢を打ち出す参政党にとって、元自民党所属で厚生労働官僚としての実績も持つ豊田氏の加入は、政策立案能力の強化と、メディアの注目を集めるという二重の狙いがあったとみられます。
参政党の神谷宗幣代表は会見で、豊田氏の官僚・議員経験を高く評価し、「スタッフとして政策立案をお願いする」と説明。
現時点での選挙候補者としての擁立は否定していますが、党勢拡大を目指す参政党にとって、知名度と実務経験を兼ね備えた豊田氏の加入は大きな意味を持つ一手と言えるでしょう。
豊田氏本人も「自分の至らなさ、未熟さを恥じながら生きてきた。反省の上に立ってゼロからのスタートを」と述べ、再起への意欲を示しました。
豊田真由子に何があった?

「被害者」としての新たな主張
今回の復帰劇で大きな波紋を広げているのが、豊田氏自身による過去の事件の再解釈です。
2024年7月に出版された、元SBI損保社長・五十嵐正明氏の著書『保険業界のゲームチェンジャー ミニ保険をつくった7人の侍たち』の中で、豊田氏は自らの官僚時代の経験を語るとともに、2017年のパワハラ事件について新たな見解を示しました。
彼女は書籍の中で、一連の出来事を以下のように語っています。
- 〈地元でめちゃくちゃをされ、パニックになったところを、録音されました〉
- 〈私の信頼や評判を貶め、そして私を怒らせるために、「意図的にわざとやっていた」としか思えない〉
これは、元秘書が意図的にミスを繰り返し、豊田氏を精神的に追い詰めて激高させ、その様子を録音した「罠」だったという主張に他なりません。
かつて涙ながらに謝罪会見まで開いた事件を、自身が「被害者」であったかのような構図に書き換えるこの主張は、当時を知る多くの人々を驚かせました。
政治家が過去の汚名をそそぐために自身の物語を再構築することはありますが、加害者と被害者の関係性そのものを逆転させるような主張は極めて異例です。
支持者の間で広まる陰謀論
驚くべきことに、この新たな物語は参政党の支持者層を中心に受け入れられつつあるようです。
SNSなどでは
「彼女ははめられた」
「本当の被害者は豊田さんだった」
といった、陰謀論とも言える言説が広まっています。
これは、既存メディアや既成政党に不信感を持つ層に対して、
「豊田氏もまた、既存の権力構造にはめられた被害者である」
という物語が強く響くためと考えられます。
過去の暴行・暴言を「反省している」としながらも、その原因を他者に求めるかのような豊田氏の姿勢が、結果的に支持者による「歴史の修正」を後押ししている状況が生まれています。
元秘書たちからの反論の真相
豊田氏が「被害者」としての物語を構築する一方で、当時を知る元秘書たちは「心の底から怒りを覚える」と、その主張に真っ向から反論しています。
彼らが語る「真相」は、豊田氏の主張とは大きく食い違う、生々しいものでした。
「暴行がなかったかのように」隠された過去
元秘書たちが最も問題視しているのは、豊田氏が物理的な「暴行」の事実を一切語らず、事件を単なる「暴言パワハラ」であったかのように矮小化している点です。
2017年の事件は、
「このハゲーっ!」
という音声のインパクトから暴言に焦点が当たりがちですが、本質はそれだけではありませんでした。
元秘書への凄絶な罵倒に加え、運転中の頭部や顔面を殴打したとされ、豊田氏は傷害と暴行の容疑で書類送検されています。
これは単なるハラスメントではなく、明確な刑事事件として捜査された事実です。
ある元秘書は、以下のように憤りをあらわにしています。
最終的に不起訴処分となりましたが、それは被害者である元秘書が
「これ以上の騒ぎになってほしくない」
という思いから「上申書」を提出し、寛大な処分を求めたためでした。
いわば、被害者の温情によって刑事罰を免れた形です。
元秘書は
「その気持ちを利用する形で“秘書にしてやられた”などと触れ回っているのは、人として許せません」
と、豊田氏の現在の言動を強く非難しています。
網タイツ事件と虚偽の告発
豊田氏による「歴史の書き換え」は、他の元秘書に対しても行われています。
前述の書籍では、別の秘書が
「無断で事務所の車を使って」
夜のアルバイトをしていたと非難する記述がありますが、この元秘書本人はこれを完全に否定します。
「もともと私はその仕事に就いていて、知人から豊田さんの事務所を紹介されたのです。
本人も周りの秘書さんも私の“兼業”を最初から認めてくれていました。
もちろん送迎には常に飲食店の車を使っており、事務所の車を使ったことは一度もありません。」
彼はむしろ、自身が受けた理不尽な八つ当たりの例として「網タイツ事件」を証言しています。
出来事 | 詳細 |
発端 | 豊田氏が葬儀用に黒タイツを用意するよう指示。 |
経緯 | 女性スタッフが気を利かせ、複数種類のタイツを 袋に入れて用意。 |
激高 | 袋を開けた豊田氏が、中に網タイツが入っているのを 見つけ激高。 |
八つ当たり | 「なんでこんなの入ってるんだ、バカ」と叫び、 運転中だった元秘書の顔めがけてダッシュボードに 網タイツを投げつけた。 |
この証言は、豊田氏の主張する「秘書が意図的にミスをしていた」という構図とは全く異なる、感情のコントロールが効かない人物像を浮かび上がらせます。
秘書を貶めるための虚偽の主張と、理不尽な暴力の具体例は、豊田氏の現在の主張の信憑性に大きな疑問を投げかけます。
豊田氏の反論と食い違う証言
元秘書たちの告発に対し、豊田氏本人は「週刊新潮」の取材に
「当該書籍に記載したあまたの事象は、すべて事実であり、メッセージのやり取りや関係者の証言などの資料に基づくものです」
と文書で回答しています。
自らの主張の正当性を、資料に基づくと強調する豊田氏。
それに対し、生々しい実体験をもって
「歴史の改ざん」
だと断じる元秘書たち。
両者の言い分は真っ向から対立しており、どちらが真実を語っているのか、改めて注目が集まっています。
まとめ:豊田真由子に何があった?参政党スタッフでの政界復帰と新たな火種
- 豊田真由子氏は2025年9月、参政党の政調会長補佐に就任し、約8年ぶりに政界へ復帰した。
- 復帰にあたり、過去のパワハラ事件を「秘書に意図的に引き起こされた罠だった」とする新たな物語を主張し始めた。
- この新主張に対し、元秘書たちは「傷害と暴行という物理的な暴力の事実を隠している」と強く反発している。
- 別の元秘書も、豊田氏から虚偽の告発や「網タイツを投げつけられる」などの理不尽な八つ当たりを受けたと具体的に証言している。
- 豊田氏の政界復帰は、過去の事件の「真相」を巡る新たな論争を巻き起こしており、その動向が注視される。

真相はいかに

