2005年に愛知県安城市で起きた幼児殺傷事件。
犯人である氏家克直の行動は社会に大きな衝撃を与えました。
彼の生い立ちを紐解くと、社会から孤立し、誰からも支援を得られなかった一人の男の姿が浮かび上がってきます。
氏家克直の生い立ちと社会的孤立

氏家克直(うじいえ・かつなお)の人生は、常に「孤独」と隣り合わせでした。
彼の人間関係の希薄さは、事件の背景を理解する上で重要な要素となります。
出生・幼少期~
出生地と家庭構成
氏家克直は、福島県伊達郡桑折町で生まれ、当時は祖父や両親、幼い妹と暮らしていました。
その後、4〜5歳ごろに福島市内の借家へ一家で引っ越しています 。
家庭環境と生活の困難さ
桑折町にいた頃から、家族の経済状況は厳しく、農業を営んでいた父親はかなり酒好きだった一方、母親は主に競馬などのギャンブルに熱中しており、経済的な困窮は深刻でした。
また、所有していた田畑も借金の担保として手放され、農業が続けられなくなってしまったとされています。
その後の生活
農業を続けられなくなった家族は、モーテルの管理人などをして生計を立てようとしましたが、それでも生活は厳しく、父親が近隣の倉庫に忍び込んで米を盗んだこともあったということです 。
- 引用元:「事件備忘録」
- 参考記事:通り魔になった男の悲しき弁当箱~イトーヨーカドー乳児刺殺事件~
- URL:https://case1112.jp/?p=2644&utm_source=chatgpt.com
仲間や友人がいない日々
周囲の証言によれば、氏家克直は非常におとなしい性格であったとされています。
しかし、その内向的な性格は、他者とのコミュニケーションを困難にし、学生時代から友人と呼べる存在は一人もいませんでした。
社会に出てもその状況は変わらず、仲間や友人もおらず、喜びや悩みを分かち合える相手がいない、極めて孤独な日々を送っていたことがわかっています。
刑務所でのいじめと孤立の深化
彼は過去に住居侵入や窃盗などの罪で服役していました。
しかし、刑務所という環境でさえ、彼に安息の地は与えられませんでした。
おとなしい性格が災いし、他の受刑者からいじめの対象にされたのです。
重労働を一人で押し付けられるなどの日々が続き、彼の孤立感はさらに深まっていきました。
ある日、溜め込んだストレスが爆発し、刑務所内で暴れたこともあったとされています。
氏家克直の生い立ちと事件に至るまでの足取り
彼の孤独な生い立ちは、出所後の生活にも暗い影を落とします。
社会復帰への道筋が閉ざされる中で、彼は最悪の事態へと突き進んでいきました。
出所から犯行までの空白期間
事件の約1週間前、氏家克直は刑務所を仮出所しました。
身元引受人がいなかったため、更生保護施設に入所しましたが、わずか数日でそこから姿を消してしまいます。
<2005年>
- 1月27日: 仮出所し、更生保護施設へ入所
- 数日後: 施設から行方不明になる
- 2月2日: 安城市に移動し、廃車で寝泊まりを始める
- 2月4日: 事件発生
所持金もほとんどなく、仕事も見つからない。
誰にも頼ることができない状況で、彼は社会から完全に切り離された存在となっていました。
心神耗弱とされた精神状態
犯行当時、氏家克直の精神状態は正常ではありませんでした。
捜査段階で「『人を殺せ』というお告げがあった」と話しており、精神鑑定の結果、彼は統合失調症を患っていることが判明します。
裁判では、この精神状態が大きな争点となりました。
弁護側は「心神喪失状態で責任能力はなかった」として無罪を主張。
一方、検察側は懲役30年を求刑しました。
最終的に裁判所は、「犯行時、心神耗弱状態ではあったが、完全な心神喪失ではなかった」と判断し、一定の責任能力を認め、懲役22年の判決を言い渡しました。
尚、公判中、当時現場にいて母子を助けようとした女性が「この男に間違いありません」と証言した際に、被告人である氏家克直がこの女性に殴りかかり、殴られた女性は全治一週間の怪我を負ってしまいました。
裁判官から「なぜ、あのようなことをした?(殴りかかった?)」と尋ねられ、被告人は「顔を見て、かっとなった」と答えています。
被告人は、公判中、手錠も腰縄もされていないある意味 “野放し状態” でした。
裁判所は「戒護(かいご)の隙をつかれた」とコメントしています。
※戒護とは:施設内で、施設の安全や秩序を維持するため、受刑者や被疑者を監視・指導し、場合によっては直接的な強制力を加えて逸脱行為を防止する行為。
釈放時期は?
2005年に愛知県安城市のスーパーで幼児を殺害した罪などに問われた氏家克直は、2008年2月18日に名古屋地方裁判所で懲役22年の判決を言い渡されました。
一般的に、刑期は判決が確定した日から起算されます。
逮捕されてから判決までの勾留期間(未決勾留日数)が刑期に算入されることがありますが、その詳細な日数は公表されていません。
仮に2005年からの勾留期間も含め22年間服役すると、満期釈放は2027年となります。
まとめ:氏家克直の生い立ち
- 安城市幼児殺傷事件の犯人である氏家克直は、生後11ヶ月の幼い命を奪いました。
- 彼の生い立ちは、不遇の幼少期を過ごし、仲間や友人もいない、極めて社会的に孤立したものでした。
- 過去の服役中には、他の受刑者からいじめを受け、さらに孤独を深めていました。
- 事件直前、刑務所を仮出所したものの、支援を得られずホームレス状態に陥っていました。
- 犯行は統合失調症の影響による心神耗弱状態と認定され、2008年に懲役22年の判決が下されました。

満期釈放まであと数年、更生していればよいのですが。





