
東京・足立区で14人が死傷した凄惨な暴走ひき逃げ事件で、逮捕された横尾優祐容疑者の実名が公表され、その衝撃的な背景が明らかになりました。
37歳という年齢で凶行に及んだ彼が、なぜ「統合失調症」を患い、職場で孤立していったのか、母親の悲痛な証言からその生い立ちに迫ります。
この記事では、新たに判明した家族の証言をもとに、横尾容疑者の人物像と事件の深層について詳しく解説します。
- かつては「普通に勤務」していた横尾容疑者が、職場のいじめを機に孤立していった経緯
- 母親が語る「優しい子」という人物像と、数年前に患った統合失調症の実態
- 事故直前の「薬の変更」と、医師から運転を止められていたにも関わらずハンドルを握った背景
- 「あとで買うつもりだった」という家族の推測と、責任能力を巡る複雑な状況
横尾優祐容疑者の生い立ちと「いじめ」による転落

多くの尊い命が危険にさらされた今回の事件において、逮捕された横尾優祐容疑者の経歴や生い立ちについての詳細が、家族の証言によって浮き彫りになってきました。
37歳で職業不詳、実家暮らしという現状に至るまでに、彼の人生には大きな転機があったようです。
かつては社会人として働いていた彼が、なぜ社会との接点を失ってしまったのか、その経緯について詳しく解説します。
職場のいじめが引き金となった孤立
横尾容疑者は60代の両親と3人で暮らしていました。
高校卒業後、工場で1年間勤務しましたが現在は無職とみられ、両親の年金で生活していた、との情報があります。
今回の事件で最も胸が痛む事実の一つは、横尾容疑者が過去に職場で「いじめ」に遭っていたという点です。
警視庁の調べに対し、以前の勤務先からは「当時は普通に勤務していた」という証言が出ていましたが、親族の証言により、その裏にあった過酷な現実が明らかになりました。
彼はかつて、一般の社会人として仕事に従事していましたが、職場で深刻ないじめを受けたことをきっかけに、退職を余儀なくされたといいます。
それ以降、彼は無職となり、足立区六月の実家で引きこもりがちの生活を送るようになったと見られています。
「普通」に働いていた人間が、理不尽な人間関係によって心を折られ、社会からフェードアウトしていく。
この「いじめ」という体験が、彼の自尊心を傷つけ、後の精神的な不安定さを引き起こす大きな要因になった可能性は否定できません。
生い立ちを考える上で、この挫折体験は、彼の人格形成に暗い影を落とした決定的な出来事だったと言えるでしょう。
数年前からの統合失調症との闘病
仕事を失い、社会とのつながりが希薄になる中で、彼は数年前から「統合失調症」を患っていたことが親族の話で判明しました。
統合失調症は、幻覚や妄想、思考のまとまりのなさなどを特徴とする精神疾患です。
彼がこの病気を発症した時期と、職場でいじめを受けていた時期の前後関係は定かではありませんが、度重なるストレスが発症のトリガーになった可能性も考えられます。
母親の証言によれば、彼は通院治療を続けており、家族もその病状を支えてきた様子がうかがえます。
しかし、結果として今回のような大惨事を防ぐことはできませんでした。
病気による苦しみがあったとしても、それが14人もの死傷者を出す暴走行為の免罪符になるわけではありません。
ただ、彼の生い立ちの中に、病気との闘いと、社会復帰への高いハードルが存在していたことは事実です。
母親が語る「優しい子」と犯行のギャップ
事件の凶悪さと、母親が語る息子の姿には、あまりにも大きな乖離があります。
家族だけが知る「家での顔」と、社会に見せた「暴走犯の顔」。
この二つの顔の間に何があったのか、母親の言葉から探ります。
「これまではトラブルがなかった」という主張
取材に応じた母親は、横尾容疑者について
と語っています。
この言葉からは、家庭内では暴力を振るったり、周囲に迷惑をかけたりするような素振りを見せていなかったことが推測されます。
家族にとっては、病気を抱えながらも穏やかに暮らしている息子であり、まさかこれほど凶悪な事件を起こすとは夢にも思っていなかったことでしょう。
しかし、その「優しさ」は、あくまで家族という守られた空間の中だけのものでした。
一歩外に出れば、自分の欲求のために車を盗み、パトカーから逃げるために人をはねるという、極めて自己中心的で残酷な行動をとっています。
家庭内での姿と、極限状態での行動の落差は、家族にとっても受け入れがたい現実であるはずです。
謝罪と後悔を口にする遺族への思い
母親や親族は、被害者遺族に対して
「本当に申し訳ない」
と謝罪の言葉を口にしています。
また、事故を止められなかったことへの深い後悔も語られています。
同居していた家族として、彼が車への執着を見せていたことや、精神状態が不安定であったことを知っていただけに、
「もっと強く止めていれば」
「鍵を管理していれば」
という自責の念に駆られていることでしょう。
加害者家族としての苦悩もまた、この事件がもたらした悲劇の一つです。
しかし、どれだけ謝罪し後悔しても、奪われた命や平穏な日常は戻ってきません。
家族は今後、息子の犯した罪の重さと向き合いながら、厳しい世間の目線にさらされ続けることになります。
事件の引き金は「薬の変更」だったのか
なぜ、このタイミングで事件は起きてしまったのでしょうか。
母親は、事故の原因についてある一つの推測を口にしています。
それは、直前に行われた「薬の変更」です。
病院を変え、新しい薬を服用していた
母親の証言によると、横尾容疑者は事故の数日前に通院先を変え、新しい薬を服用し始めたばかりだったといいます。
精神科の薬は、人によって合う合わないの差が大きく、副作用として眠気や意識の混濁、焦燥感などが現れることがあります。
母親は、
「薬が合わず、意識が朦朧としていたのではないか」
と推測しています。
もし、薬の副作用で判断能力が著しく低下していたのであれば、パトカーから逃走した際の無謀な運転や、その後の不可解な行動にも説明がつく部分があるかもしれません。
しかし、警察の取り調べに対し、彼はきちんとした受け答えをしており、医師からも
「単独外出が可能」
という診断を受けていました。
「薬のせい」ですべてを説明できるのか、それとも彼自身の身勝手な意思が勝っていたのか。
この点は、今後の裁判における責任能力の有無を巡る最大の争点になるでしょう。
医師による運転禁止の指示を無視
ここで重要なのは、彼が免許証を持っていたものの、医師からは
「運転を止められていた」
という事実です。
また、常習的に違反を繰り返していました。
統合失調症などの薬を服用している場合、副作用で事故のリスクが高まるため、医師から運転を控えるよう指導されることは一般的です。
家族もそのことを認識しており、彼が運転することを止めていたはずです。
それにも関わらず、彼はその禁を破り、しかも盗難車という形でハンドルを握りました。
「乗りたい気持ちが抑えきれなかった」
という供述は、医師の指示や家族の心配を無視してでも、自分の欲求を優先させたことを意味します。
薬の影響があったとしても、そもそも
であることを自覚しながら車を走らせた時点で、重大な過失、あるいは未必の故意があったと言わざるをえません。
「あとで買うつもり」という不可解な論理
横尾容疑者の犯行動機について、母親からはさらに耳を疑うような推測が語られました。
彼の車への執着と、現実認識の甘さが露呈したエピソードです。
高級車クラウンへの憧れと現実の乖離
母親によると、横尾容疑者は以前から自動車販売店へ通っており、車が好きだったといいます。
そして、今回の盗難についても
「あとで買うつもりだったのではないか」
と推測しています。
無職でありながら、高級車であるクラウンを「あとで買うつもりで」勝手に持ち出す。
この論理は、一般的な社会通念からすれば到底理解できないものです。
しかし、彼の中では「試乗」や「予約」の延長線上に、今回の行為があったのかもしれません。
この極端な現実認識の歪みこそが、彼の抱えていた病気の特性なのか、あるいは社会経験の断絶が生んだ幼稚性なのか。
「お金を払えばいい」
「あとで返せばいい」
といった安易な考えで、他人の財産や命を危険にさらしたとすれば、その罪の深さは計り知れません。
足立区六月の実家で孤立していた日々
彼が暮らしていた足立区六月2丁目の実家周辺は、下町の情緒が残る生活しやすい地域です。
しかし、職場でいじめに遭い、無職となって実家に戻った彼にとって、地域社会はどのような場所に映っていたのでしょうか。
同級生たちが働き、家庭を持っていく中で、自分だけが時が止まったように実家で過ごす日々。
その焦燥感や孤独感を埋めるために、高級車というステータスシンボルに執着し、現実逃避のドライブに憧れを抱いたのかもしれません。
「きれいな水がある山に行きたかった」という言葉は、閉塞した日常から抜け出したいという、彼の悲痛な叫びだったようにも聞こえます。
しかし、その逃避行の代償として、罪のない人々の日常を破壊してしまった事実は、決して許されるものではありません。
まとめ:横尾優祐容疑者の生い立ちと「優しい子」を変貌させた過去のいじめ
この記事では、足立区暴走ひき逃げ事件の横尾優祐容疑者について、家族の新たな証言をもとにその生い立ちや背景を解説しました。
最後に、今回のポイントを箇条書きでまとめます。
- 横尾優祐容疑者は足立区六月の実家で暮らす37歳、以前は職場でいじめに遭っていた。
- いじめをきっかけに退職し、数年前から統合失調症を患っていた。
- 母親は「優しい子でトラブルはなかった」と語り、事件に衝撃を受けている。
- 親族は被害者遺族に対し、事故を止められなかった後悔と謝罪の意を示している。
- 事故の数日前に病院を変え、新しい薬を服用し始めたばかりだった。
- 母親は「薬が合わず意識が朦朧としていたのではないか」と推測している。
- 医師からは運転を止められていたが、その指示を無視して犯行に及んだ。
- 「あとで買うつもりだった」という家族の推測は、彼の現実認識の歪みを示唆している。
- 警察は取り調べの様子などから責任能力があると判断しているが、家族証言との食い違いもある。
- いじめによる孤立や病気への理解など、事件の背景には複雑な要因が絡み合っている。

今後の捜査の進展を見守りたいと思います。














