2025年8月、再生可能エネルギー業界の革新者、新見ソーラーカンパニー代表取締役社長の佐久本秀行氏が急逝しました。
医療分野から転身し、独自の技術で未来のエネルギー問題に光を灯した同氏の突然の訃報は、多くの人々に衝撃を与えました。
その功績は、未来の地球環境を真摯に考え抜いた情熱と行動力の証です。
佐久本秀行の異色の経歴：医療分野からの挑戦
佐久本秀行氏の歩みは、一般的な起業家のそれとは一線を画す、ユニークなものでした。
その原点は沖縄での幼少期と、医療現場での経験にあります。
沖縄での幼少期と科学への関心
1975年、佐久本氏は沖縄県うるま市で生を受けました。
幼い頃からものづくりに強い興味を示し、廃棄されたテレビやゲーム機を分解しては仕組みを調べ、洗浄して再生させるという遊びに熱中していたといいます。
この探究心とリサイクルへの自然な意識が、後の革新的な事業の礎となりました。
大きな転機となったのは高校時代です。
テレビで太陽光電池の特集を見たことで、「未来のエネルギー」としての太陽光発電に強く惹きつけられました。
この出来事が、彼の人生の方向性を決定づける最初のきっかけとなります。
放射線技師への道とエネルギーへの目覚め
高校卒業後、佐久本氏は医療の道を志し、岡山県にある川崎医療短期大学の放射線技術科へ進学します。
1996年に卒業し、放射線技師として新見市内の病院に就職しました。
医療の専門家としてキャリアをスタートさせましたが、学生時代に物理学で学んだX線の発生原理などを通じて、「エネルギーの仕組み」そのものへの関心は深まるばかりでした。
仕事の傍ら、自宅で個人的にソーラーパネルの実験を重ねる日々が始まります。
扇風機が自作のパネルで発電した電気で動いた時の感動が、彼を本格的な研究へと駆り立てました。
新見ソーラーカンパニーの設立
個人的な実験と研究を続けた佐久本氏は、部品の調達などで個人であるがゆえの困難に直面しながらも、その情熱で道を切り開きました。
放射線技師としての仕事を続けながら、再生可能エネルギーの世界へ本格的に足を踏み入れます。
全くの異業種からの参入でしたが、医療現場で培われた科学的知見と、持ち前の探究心が彼の事業を支えました。
地元の市長が試験的に導入したことをきっかけに、その技術力と信頼性は口コミで広がり、事業は着実に拡大していきました。
| 年号 | 経歴 |
| 1975年 | 沖縄県うるま市で誕生 |
| 1996年 | 川崎医療短期大学 放射線技術科を卒業、放射線技師として就職 |
| 2009年 | 株式会社新見ソーラーカンパニーを設立 |
| 2017年 | 太陽光パネルの廃棄問題に本格的に着手 |
| 2019年 | 「佐久本式ソーラーパネル熱分解装置」のプロトタイプを完成 |
| 2021年 | 日本および中国で特許を取得 |
| 2023年 | インドで特許を取得 |
| 2025年 | 中国特許「CN 113748299 B号」などを取得後、8月に急逝 |
佐久本秀行の経歴を彩る革新的な功績
佐久本氏の功績は、単に太陽光発電システムを普及させたことだけではありません。
彼の真価は、その先にある「廃棄問題」という巨大な社会課題に正面から向き合った点にあります。
世界が注目した「佐久本式リサイクル技術」
太陽光パネルの寿命は約20〜30年とされ、2030年代以降に予測される大量廃棄は、業界の大きな課題でした。
多くが埋め立て処分される現状に対し、佐久本氏は2015年頃からリサイクル技術の開発に着手します。
この装置は、世界でも類を見ない画期的な技術でした。
- 無酸素状態での熱分解:
600度以上の過熱水蒸気を利用し、酸素を使わないためCO₂を排出しない。 - 高い安全性:
無酸素処理により、処理中の爆発リスクを排除。 - 高純度の再資源化:
ガラス、金属、セルといった素材を高い純度で分離・回収し、95%という驚異的なリサイクル率を実現。
この技術は国内外で高く評価され、日本、中国、インドで特許を取得。
世界中の企業や自治体から視察や導入相談が相次ぎました。
彼は、大量廃棄という未来の課題に対する具体的な解決策を、世界に提示したのです。
地域に根差した多角的な事業展開
佐久本氏のビジョンは、エネルギー問題の解決だけに留まりませんでした。
岡山県新見市を拠点に、地域社会の活性化にも情熱を注ぎました。
次世代育成のために小学生向けの作文コンクール「ドリームチャレンジャー」を主催したり、地域住民の交流の場としてカフェ「SecretBase」や飲食事業「OpenBase」を立ち上げたりと、その活動は多岐にわたります。
さらに、農業と太陽光発電を両立させる「H・Sアグリソーラー」といった事業も展開し、持続可能な地域づくりに貢献しました。
彼の座右の銘は「美しい地球を次世代へ」。
その言葉通り、エネルギー、環境、そして地域社会の未来を見据えた活動は、多くの人々に影響を与えました。
佐久本氏の経歴は、一つの分野に留まらない、未来への責任感に満ちたものでした。
まとめ
佐久本秀行氏の生涯は、強い信念と行動力がいかにして未来を変える力を持つかを示しています。
彼の残した功績とビジョンは、これからも多くの人々に受け継がれていくことでしょう。
- 沖縄県出身で、幼少期からものづくりとリサイクルに関心を持つ。
- 放射線技師として医療現場で働きながら、独学で太陽光発電を研究した異色の経歴を持つ。
- 2009年に新見ソーラーカンパニーを設立し、再生可能エネルギー業界に参入。
- 世界初となるCO₂排出ゼロの「佐久本式ソーラーパネル熱分解装置」を開発し、リサイクル率95%を実現。
- 地域貢献活動にも積極的に取り組み、エネルギー問題だけでなく持続可能な社会づくりに尽力した。
まだお若いのに残念です。
ご冥福をお祈りいたします。
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